「活版印刷 三日月堂」 ほしおさなえ [本]
- 作者: ほしお さなえ
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2016/06/03
- メディア: 文庫
活版印刷という書名に惹かれました。
いい本だとやっぱり予約者が結構いるのですよね。
ようやく順番が回ってきて早く返さないといけないので大急ぎで読み始めました。
大急ぎで読まなくても次の章が気になってほとんど一気読みに近かったです。
最初からは印刷屋さんの話が出てこなくて「あれ?」と思っていたら出てきました。
印刷屋の店主が高齢のため店じまいをしていて5年が経っているところへ孫娘が住むために引っ越してきたのです。
そうしていろいろ話が展開していってお店を再開することになります。
彼女は学生の頃にこのお店を手伝っていたので作業自体は把握しているので再開できたわけです。
そのお店に訪れるお客さんとのやりとり、それぞれの思いを回想したりして章が進んでいきます。
高浜虚子の俳句も出てきたりしてそちらも興味を持ちました。
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」も話題になるのですがこちらはちょっと苦手な分野なのでサラッと読みました。
どちらも奥が深そうです。
時には印刷の説明が会話に入っていたりしてそれに違和感を持つ方もいるようですが私には知らないことばかりだったのでとても面白かったです。
「インク」ではなくて「インキ」。
ルビの由来。
活版印刷が凹んでいるように見えること。
などなど・・・。
最終章は活字屋さんという(活字を作る仕事)職業もあってその遺品にまつわるお話でこれまた興味深かったです。
活版印刷に絡めながらも店主やお客さん、それぞれの来し方、生き方も描かれていて心地よい小説でした。
結婚をあえて選ばなかった女性、迷いながらも仕事を辞めて結婚にふみきり海外赴任について行くと決めた女性。2つの生き方も示されていてこのあたりも女性ならではの生きる上での選択の難しさを感じました。
ただ、どちらにせよ、自分が納得できるかどうかなのかもしれません。
印象に残ったフレーズ
「みんな失ったものを抱えて生きている」
そうですよね。
悲しみを抱えたりそれを乗り越えて生きているのですよね。
今年最後に読み終えた本がこの本でよかったです。
今年一年このブログにお越しくださりありがとうございました。
このブログも10年以上続けることができました。
マイペースでまた続けていきたいと思っています。
これからもよろしくお願いいたします。
年末のためコメント欄は閉じることにしました。
また来年、お時間があるときにコメントをいただけれは嬉しい限りです。
どうぞ、よいお年をお迎えください。
川村元気さんプロデュース映画「君の名は。」 [映画]
先日のあさイチ「プレミアムトーク」に出演されていました。
お名前は知っていたけれど今どきの若い作家さんだと思ってましたがそれは一面に過ぎないことを知りました。
数々の有名映画のプロデューサーをされていたのですね。
「悪人」「告白」「怒り」 などなど・・・。 そして「君の名は。」
そうだったのか・・・。
監督の新海誠さんはあちこちでクローズアップされていましたが川村さんについては私の目に触れてませんでした。
子どもの頃から「違和感」に感じたことを大事にされていてそれらにスポットを当てていくという感じらしいです。
「君の名は。」の音楽をRADWINPSに任せるにあたって脚本から音楽を創りだしてほしいとの依頼をされたそうです。
出来上がった映画から音楽を作るとどうしてもそこに当てはめてしまってそれ以上のものは作り出せないと思ったからだそうです。
そうすることによって脚本も少し変えたりして相乗効果があったそうです。
東宝の一社員さんらしいです。
彼の才能を遺憾なく発揮させている会社も凄いですね。
実績を積み上げていくことによって益々彼の才能にも磨きがかかっていくのかもしれませんがそれでも潰さないところが凄いです。
ということで気になっていた映画をやっぱり観に行ってきました。
私が一番知りたかったこと・・・
それはどうして入れ変わったかということ。
結局それについては私にはわかりませんでした。
1回観ただけでは理解しにくいようです。
それで知り合いにレクチャーしてもらいました。
そうしたら「そういうことだったのか。」と納得できました。
そしてネタバレのサイトを再度読んでみたらその文章の意味がわかりました。
映画を観る前に読んだときにはやっぱりわからなかったのです。
そしてこんな本も教えてもらいました。
君の名は。 Another Side:Earthbound (角川スニーカー文庫)
- 作者: 加納 新太
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2016/07/30
- メディア: 文庫
映画の本編を補完しているようです。
いろんな登場人物の立場から描かれていてより理解できるそうです。
若者向けに作られた映画だそうですがやっぱりそうですね。
そういえば、MBS元アナウンサー角淳一さんの番組内でこの映画が話題になったときにこの映画についての感想はあえて言われませんでしたし、そのときの表情が微妙だったのです。
ネタバレになることを考慮してのことかと思いましたが確かに感想が言いにくいような気がします。
まぁ、年内に観て気持ち的にはスッキリしました。
テレビで放送されたら確認のため観たいかな?という気はします。
「デトロイト美術館の奇跡」 原田マハ [本]
破産したアメリカのデトロイト市。
これからの財源をどうするか?という問題が起こり、手っ取り早く財源にできるのがデトロイト美術館の収蔵品を売却するという案でした。
結局、寄付を募ることで散逸を防いだのですがその話題を元に小説を書かれたようです。
月刊誌に掲載されたのを単行本化されたようで4編からなります。
ほんとにありそうな話で小説家として巧みな描き方だなぁ、といつも感心します。
表紙を飾るセザンヌの「画家の夫人」という絵を軸に連作という形で描かれています。
デトロイト美術館の数ある有名な絵からこの絵をチョイスされるあたりが心憎いです。
この絵をみているはずなのですがほとんど覚えていません。
私が知っているセザンヌの絵からはちょっとイメージが違うような気がします。
実際には奥さんの絵は何点か描かれているようなのですが私は知りませんでした。
特に美人というわけではないけれど、そして服装も質素な感じですがそれでも芯の通った女性という感じがします。
この本の表紙となっているのを知っていたらもっときちんと観たのに、と後悔しきりです。
「ピカソになりきった男」 [本]
- 作者: ギィ・リブ
- 出版社/メーカー: キノブックス
- 発売日: 2016/08/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
自伝です。直訳的でちょっと読み辛かったのと図書館で借りて急いで返さないといけなかったので斜め読みです。
前書きにあるのですが彼はコピーを作るのはなくて巨匠が描いたかもしれないという新作を描いてました。
そして最初の頃は本物であるという証明をさせて証明書は本物なので当然その絵は本物となるのです。
そのためには
・画家を調べ尽くす
・その時代の画材を入手する
・画家になりきる
こういう風にして贋作を描く高揚感、画家と一体感となることがやみつきになったみたいです。
しかし後半期に一緒に仕事をした仲間は保証書さえも偽物を作る、それはペテンそのものと彼自身も言ってます。
2005年に逮捕、2010年に禁固刑4年、執行猶予3年、保護観察1年 の刑を受けながらも2012年には映画「ルノワール、陽だまりの裸婦」のスタッフとして、絵の制作とルノワール役の手の役で協力しているのにはちょっと驚きました。
そして今は
「偉大なアーティスト風の絵なのだがサインするのは俺で他人の作品とは言わずに売られている。」 そうです。
「だから俺は投機目的ではなく家に絵を飾る楽しみのために買う愛好家のために、完全に合法的に描いている。
彼らが買っているのは贋作とも言えるが法的にはそうでない作品である。巨匠の絵を買えない人たちにとっては魅力的、彼らは俺をごく普通に美術館以外で絵的な感動を味あわせてくれる、ひとりのアーティストとしてみてくれている。」 のだそうです。
確かに私なんかはそれが贋作が本物かよりもその「絵」自体が気に入っているのであって本物でなくてもいいように思います。
実際、美術館のショップなどでは限定とはいえシルクスクリーンの絵を販売してます。
それでも結構いい値段してますよね。
画家の財団とかが認定しているからでしょう。
現在も美術館に彼が描いた絵が展示されていると彼は言ってるそうです。
証明書が本物である限りそれはありえますよね。
前回紹介した映画「迷宮のレンブラント」の結末も映画を見終わったときは「映画ならではの結末」と思いましたが案外真理かもしれないな、と思い直しました。
特に贋作についてとても興味があったわけではないのですがたまたま映画をみたり、本を読んだりして面白かったので載せてみました。
「迷宮のレンブラント」 [映画]
題名に「レンブラント」が入っていたので観ることにしました。
伝記的な映画かな?と勝手に思っていたのですが全然違いました。
とある画家。なかなか自分の作品を発表できないでいました。
ただ、父親が贋作に関わっていたのでその仕事が廻ってくるのでした。そして父親よりも上手なためその仕事の依頼が絶えない感じです。
父親にもやめるように諭されるのですがそんな時に大きな依頼が舞い込みます。
贋作者はあまり目立つような作品には手を出さないのですが今回はレンブラントの行方不明になっている大作の依頼でした。
そこからどんどんいろんな展開になります。
映画の冒頭シーンはこの画家が警察に追われて逮捕される様子から始まるので 「あぁばれたか・・・。」と思いますが・・・。
ことの始まりを振り返る形でドラマが始まっていきます。その展開がハラハラドキドキという展開でドラマティックです。
そして大どんでん返しには爽快感もあってなかなか面白い映画でした。
1997年の映画ですがそれほど古さも感じられず、その頃から贋作には科学的な検査もされていることがわかります。
なので贋作を作るにあたって絵の具からその当時の成分を分析してそういう絵の具も使っている様子が描かれています。
逮捕されて裁判になるのですがそのあたりも見所です。
贋作裁判で有名な「ファン・メーヘレン」のことも引き合いに出されてきます。
その贋作事件のことが書かれた本がこちらです。
映画とは関係なくたまたま以前にザーッと読みましたが画家の哀しい性が感じられました。
絵を描く才能があるのに評価されない・・・。
フェルメールを超える絵が描けるのに評価されない・・・。
そんな思いが贋作を描くことに力を注ぐことになってしまいます。
それは贋作を作る事が目的ではなくて自分はこれだけの絵が描けるということを証明したい、という思いからなのだと思いました。。
そして案の定、鑑定士が「本物」とお墨付きを与えるのです。
溜飲を下げたのでしょうが結局逮捕され奈落の道をたどってしまうのです。
やっぱり贋作をつくるということは罪ですからそれ相応の報いを受けるのかもしれません。
そんなことを思っていたらまた贋作事件の本を知り読みました。最近の事件ということで本人が執筆しています。
「ピカソになりたかった男」です。
次に載せます。
世界の棟方志功 [美術]
あべのハルカス美術館で開催中です。
何度か観ているのですがちょっと久しぶりだったので行ってきました。
初期の頃の油絵や作品が展示されていて興味深かったです。
72枚からなる大作もありこれを展示できる美術館はあまりないかもしれないです。
作品をみていると温かい気持ちになります。
クリスマスですね。
壺中之展 [美術]
大阪市立天王寺美術館開館80周年記念展です。
12/4までで期間が終わり近くのせいか意外にも人が多くて驚きました。
この美術館のコレクションと寄託品による展覧会です。 常設展の大規模版です。
上の写真の絵は橋本関雪の絵の一部分です。
寄贈品は東洋美術関係が多いようで博物館的な展覧会でした。 ちょっと私の好みではなくまた、たくさんの展示品でちょっと疲れました。
若冲の蔬菜図がみられてよかったです。 2回ほどみているのですがこれは寄託品みたいです。
もう1点以前細見美術館でみた中村芳中の「蓮図扇面図」もみることができました。
尾形光琳の関係資料も寄贈されているようです。
玄関に燦然と輝くシャンデリアは昭和50年代に取り付けられた物だと説明してありました。 当初からの物ではなかったのですね。
難産の末にできあがったこの美術館、ずっとずっと存続しますように。