「暗幕のゲルニカ」 原田マハ [本]
ピカソの「ゲルニカ」は反戦のメッセージを込めた作品であることはなんとなく知っていましたがそれにまつわるドラマがあったことは知りませんでした。
ピカソがこの作品を描き終わり万博会場で披露された後、ロンドンなどを巡回してその後アメリカに約40年程、疎開していたそうです。
それはピカソによる意思でスペインの民主化がなされるまでという約束だったそうでその後民主化されて1981年にスペインに返還されたそうです。
「ゲルニカ」は油彩画ですがピカソの指示で3点のタペストリーが制作されていることもこの本をきっかけに知りました。
1点はニューヨークにある国連安全保障理事会のロビー
1点はフランス?
1点はなんと群馬県立近代美術館が所蔵していると知り驚きました。
2003年、イラク空爆に関する会見が国連安全保障理事会ロビーで行われた際、後ろにあるべき「ゲルニカ」のタペストリーに暗幕がかけられていたんだそうです。
その話もニュースで流れたそうですが全然知りませんでした。
そんなことがあったのですね。
その事件がこの作品を描くきっかけになったそうです。
原田さんのアートミステリーは史実に基づくフィクションとことわってあるのですがどこまでが史実でどこからがフィクションなのか素人にはわかり辛く混乱してしまいます。
(週間東洋経済の インタビュー記事によると10%の史実と90%のフィクションだそうです。)
この本の最後にもことわってあります。
20世紀部分は史実に基づいたフィクション
21世紀の部分はフィクション、しかも主な登場人物は実在しないしモデルもいないとのこと。
しかし、ゲルニカの疎開に当たってかなり貢献したパルドが実在しないとしたらどうやって疎開されたのか知りたくなりましたがそのあたりが想像力をかきたてての創作なんでしょう。
結構ドラマティックに描いてあってさすがだな、と思います。
もともと知識はお持ちだったのでしょうがかなりの文献を読みこなされて、またスペインへの弾丸ツアーにも行かれて描かれたようです。
この作品、第155回(平成28年/2016年上半期) 直木賞候補となっています。