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「眩 くらら」 朝井まかて [本]

 

眩

  • 作者: 朝井 まかて
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/03/22
  • メディア: 単行本

  
 
葛飾北斎の娘 「お栄(葛飾応為)」 を中心に描いた小説です。

北斎に娘がいたのは展覧会に行ったときに数点展示されていたのでそのときに知りました。 「娘さんがいたのか・・・。」とちょっと驚きました。
女だから跡を継げなかったのかな?などと思ったりあんまり認知されていなかったのかと思ったりしてました。
残っている作品が少なそうでしたから。

朝井まかてさんの本も好きなんですが時代物が多くてちょっと苦手なんですよね。
でも今回北斎にまつわるお話だったので読んでみることにしました。 図書館ではやっぱり予約者多数でした。

朝井さんの本もどこまでが事実なのかわかりませんがアウトラインは事実なんだろうな、と思います。
小説内で北斎の絵の手助けをしていたことが描かれていますし、自分の名前では作品の価値が低くて値段が高くならないので代筆をしても「北斎」の名前で売っていたようです。
決して贅沢をしている生活ではなかったようですが借金が多いようでした。
その要因の一つに北斎の孫、(お栄の甥)の尻ぬぐいをしている様が描かれてました。
どこまで事実かわかりませんが。
 
この本の表紙を飾っている絵は「吉原格子先之図」(太田記念美術館所蔵)で惹きつけられる作品です。 
落款はないのですが3つの提灯にそれぞれ 「應」 「為」 「栄」の文字を入れてわかる人だけがわかるという隠れ落款の細工をしているのも憎いです。
 

それにしても「富嶽三十六景」は北斎が病から立ち直って70過ぎの作品だと知り驚きました。
北斎は90歳まで長生きしたそうです。
北斎の死後、お栄は消息不明だそうです。
 

あんまり浮世絵は好きでないのであえて展覧会は観に行ってないのですがそれでも北斎だけはちょっと観ておこうと気になる人です。
今後、北斎展があったら応為の作品が展示されているかを確認して行きたいと思いました。





お栄こと「葛飾応為」に興味がわいて図書館に何か本がないかと調べたら2冊ありました。



応為担担録 (河出文庫―BUNGEI Collection)

応為担担録 (河出文庫―BUNGEI Collection)

  • 作者: 山本 昌代
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1990/04
  • メディア: 文庫

こちらは古い本なので大活字本しか所蔵していなかったのですがそれで読みました。
山本昌代さんのデビュー作のようです。
北斎親娘のあるときのエピソードが描かれてました。会話が多くて落語の本を読んでる感じでした。
普通大活字本だと数冊になるのですが1冊に収まっているので短編であっという間に読めました。

もう一冊

北斎娘・応為栄女集

北斎娘・応為栄女集

  • 作者: 久保田 一洋
  • 出版社/メーカー: 藝華書院
  • 発売日: 2015/04/30
  • メディア: 単行本

 

応為、北斎の絵を集めていろいろ解説してありました。
ちょっと専門過ぎてついていけませんでしたが絵を観るのは面白かったです。

「眩」の章の題名が一部、絵の作品だったようでそれらの絵を確認できました。

展覧会で展示されていてもその後オークションに出されて所在不明になっている作品も何点かあって写真だけが残っているというのもなんだか寂しいです。
 
落款というのも曖昧でそれを押せばその人の作品になってしまう恐れもあるんですね。


仙人になりたいと思うような奇女だそうで炊事・掃除などの家事はまるでだめ、時間があれば絵のことを考えていたいし、絵を描きたかったようです。
消息不明後もフラフラと絵を描いて自由に生きていたのでしょう。
面白い人生を生きた女性に出会えました。